サイバーホビー(緑箱) #6730 1/35 ティーガーI 初期生産型 "ミハエル・ヴィットマン" 初回限定フィギュア付属

通常、独立重戦車大隊で運用されるティーガー部隊の中で、数少ない例外が、武装親衛隊のLAH師団に編成されたティーガー中隊です。
ミハエル・ヴィットマンは当時からその才能を見いだされ、ティーガー中隊創設時からティーガー小隊の指揮官を担いました。ヴィットマンはクルスクの戦いで30両の敵戦車を撃破。彼のティーガーの砲手は当時からバルタザール・ヴォル(のちに騎士十字章受勲)で、ヴィットマンとヴォルという二人のコンビネーションがずば抜けたスコアをたたき出すことになった要因でしょう。
クルスク戦後、ティーガー中隊はその所有車両をいったん他の師団に譲渡し、転戦先のイタリアで新たに27両の新品ティーガー(初期型)を受領しました(1943年8/15-8/25)。この中には2両の指揮型が混じっており、それぞれS04号車とS05号車のターレット番号を記入されました。これが今回キット化されたS04号車です。

1943年12月30日、ヴィットマンは中隊創設時からの指揮官であったクリング大尉が大隊長に昇進することを受けて、中隊長に昇進することが内定します。この後、ヴィットマンはその活躍に一気に脂が載り、1944年1月10日、通算66両目を撃破したことで騎士十字章を推挙されます。実はこの時点まで、中隊は1台の補充も受けておらず、4ヶ月余りの戦いで、中隊の保有車は9両にまで落ち込んでいました。また、可動戦車も4両程度だったようです。しかし、ヴィットマンは1月13日までの3日間で更に22両撃破。通算88両撃破したところで、騎士十字章を受領しないうちに、柏葉付騎士十字章を推挙されます。
翌日、ティーガーを含む戦車グループはロシア軍の集結地に突入、ヴィットマン車はこの日も2両を撃破。ロシア軍を追い散らした村落で師団長から騎士十字章を受領しました。
1月18日、砲手のヴォルも騎士十字章を受領。
1月30日、ヴィットマンへの柏葉付騎士十字章が確定し、同時に中尉に昇進しますが、この日までに彼のスコアは117両に伸びていました。彼は生涯138両の戦車を撃破していますが、そのうち約半数は1944年1月に成したものです。この時期、彼とヴォルのコンディションは最高調に達していたのです。

後にティーガー中隊は解散し、第101重戦車大隊として再編され、ノルマンディに赴きます。そこで華々しいもう一幕が用意されていたのは、皆さんよくご存じのことでしょう。


初回生産分にのみ付属するクルーのフィギュアです。向かって左からイアガングSS二等兵(無線手)、ヴォルSS伍長(砲手)、ヴィットマンSS少尉、レースナーSS二等兵(装填手)、シュミットSS上等兵(操縦手)、らしいです。記録写真と比べても結構よく似ています。ちなみに、箱絵は、向かって左からイアガング、レースナー、シュミット、ヴィットマン、ヴォルと並んでいます。
なぜかヴィットマンの襟元に騎士十字章のモールドが無かったため、手持ちのパーツを取り付けています。


S04号車についても少し考察してみたいと思います。S04号車は箱絵の基になった記録写真で、砲塔と車体左側にアンテナが立っていることから指揮戦車であることは間違いありません。また、砲塔上にローダーズペリスコープが無い事から、1943年3月以前の生産車である可能性が高いと思われます。しかし前述したように、LAHはS04を43年8月に受領しており、この間、貴重なティーガーを「寝かせていた」可能性は高くありません。これは「根拠の無い仮説」ではありますが、最初は通常型として生産され、前線で使用された後に後送され、指揮車両として再生された可能性もあります。


記録写真のS04号車は今のところ正面と左から撮影したものしか見つかっていません。これによると、左の転輪は、第1、第3、第7の一番外側の転輪が脱落しているようですので、そのように製作してみました。また、今回の大西画伯は、記録写真を徹底的に読み込んでおり、前面装甲板に固定されているスコップが脱落していること、牽引用のU字フックが脱落していること、砲塔左側面の予備履帯が2番目だけに掛かっており、他は無くなっている事などを丁寧に書き込んでいます。また、車体ハッチのペリスコープ底部に付けるガード(G26)は取り付けられていないことも分かります。絵画として素晴らしいのはもちろんん、資料としての価値も第一級といえるでしょう。S04号車は車体左側面の履帯交換用ワイヤーも欠落しているのですが、そこまでやってしまうと製品レビューの域をはみだしてしまうと考えたので、見本では装着しています。下側の予備履帯ラックに付いているピンは伸ばしランナーから自作しています。


S04号車は右側の写真が無いため、転輪の脱落状況や予備履帯の残存数はまったく分かりません。見本では第1と第4転輪を外してみました。


今回、ドラゴンは、シャーシを極初期型(#6600)から流用していますが、それ以外の車体装甲板、砲塔は新金型としています。意外なことに、ドラゴンは極初期(いわゆる「最初の20台」)用の車体天板、中期型(1944年1-2月生産車)の車体天板、後期型の車体天板(砲塔リングの外周に跳弾リングの付いたもの)の金型は持っていたのですが、「標準的な初期型」の車体天板をパーツ化するのはこれが初めてです。
「オレンジ箱と白箱のヴィットマンの初期型があるじゃろ」と思われた方もいらっしゃるでしょうが、実はこの2つはコストダウンのため中期型の車体天板が入っていたのです。

その他の部分で、例え既存のパーツがある部分でも、金型技術の進歩により解像度が上げられるようになった部分は新規にパーツが起こされています。
例えば、砲塔のスモークディスチャージャー取付基部でここは溶接跡のモールドが追加されたパーツが新たに入っています。写真には写っていませんが、スモークディスチャージャーの底部には電気信管基部のモールドが追加されたのものに差し替わっています。ボッシュライトも新規に起こされており、不要パーツとして入っている旧パーツと比べるとドラゴンのこだわりようが分かって頂けると思います。


転輪も新規パーツとなっています。タイヤのメーカーがコンチネンタルとフルダ、2種類入っているのは3者共通なのですが、#6600と比べるとメーカーロゴがよりリアルになっています。また、ボルトの座金が三者でそれぞれ違います。6600は3枚の座金で固定、6700は3枚だが、座金の形状が変更されており、6730は4本を留める大型の座金と2本を留める座金から構成されています。


ティーガーIは1942年12月生産車から、近接防御兵器として、車体の5箇所にSマイン投射器が取り付けられました。これは対人地雷のSマインを打ち出すもので、Sマインは爆発すると350個程度の鉄球が数十メートルに渡って飛散する凶悪な兵器でした。しかし、小火器の命中などで暴発した場合は、随伴の味方歩兵を傷つけるリスクもあり、普段は装填しないままで運用し、本当に必要になったときに装填していたようです。のちには車内から装填して360度に撃ち出せる近接防御兵器に改良されます。ドラゴンは、投射器底部にある電気信管用の穴まで再現しており、台座側面のボルトは一体成型で再現しています。指揮型は中央の1個が取り外され、代わりにアンテナポストが増設されています。


キットは指揮型を再現するため、アンテナポストがモールドされていますが、車体右のFuG8用アンテナポストは隠し穴となっており、この穴を開口しなければ通常型になります。通常型にする場合は、FuG7用アンテナ穴は埋め、この場所にSマイン投射器を取り付けてください。キットには不要部品として5個目のSマイン投射器が入っています。

キットでは残念ながらアンテナシャフトは省略されています。もし市販のパーツなどを使用する場合は、FuG5は2メートルアンテナ、FuG7は1.4メートルアンテナ、FuG8はシュテルンアンテナ(スターアンテナ)を使用してください。指揮戦車はFuG5とFuG8を組み合わせたタイプがSd.Kfz.267と呼ばれ、FuG5とFuG7を組み合わせたタイプがSd.Kfz.268と呼ばれていました。S04号車はアンテナだけ見ると268ということになります。


車体後部左にある留め具がやたら付いたボックスは履帯の展張を調節するための工具が入っていました。このパーツもオレンジより解像度の高いパーツに差し替わっています。
そのすぐ右にある斜めがけされたパイプ状のパーツは延長用のアンテナシャフトが入っていたとされています。


指揮型では、砲塔同軸機銃を降ろし、FuG5無線機を搭載していました。機銃取付穴は塞がれていますが、ドラゴンのキットの様に装甲栓を溶接した個体も確認出来る一方、穴が最初から開けられていない個体もあります。


ティーガーの機関室上面レイアウトは頻繁に変更されていますが、キットには不要パーツとしてS04号車よりも前の時期の再現できるパーツも入っています。向かって左がドラゴン推奨の組み合わせです。右のH18とV8の組み合わせが、より若い時期の機関室レイアウトです。この組み合わせでは、機関室後端のパネルに丸いキャップが付いているのですが、ある時期からこれが廃止されて三角の板に切り替わります。戦車研究家のジェンツ氏は、この切り替えは43年3月以降と判定しており、ドラゴンは今回この説を採用したようです。研究者によっては、切り替えはもっと時期が遅く、5月頃としている方もいらっしゃいます。S04号車の機関室は写真が無く、実際にどちらのレイアウトだったかは定かではありません。


今回、コマンダーズキューポラにはSF14Zカニ眼鏡が取り付けられるようになっています。カニ眼鏡は長距離砲戦の測距を補助するもので、レンジファインダーのような厳密な測距はできませんでしたが、実物の大きさが分かっている敵戦車ならグリッドとの大きさの対比で、ある程度の距離を知ることができました。例えば、III突はコマンダーズハッチを閉じたままでもカニ眼鏡が使えるよう小ハッチが付いていましたが、ティーガー指揮型にはそこまでの設備はなく、カニ眼鏡を使うにはハッチを開放しておく必要がありました。

ローダーズハッチの取っ手(C31)を付け忘れてますOrz


ティーガーは列車などで長距離を輸送する場合、砲塔が回転しないようにロックするトラベリングロック機構が付いていました。車体側の穴と砲塔裏の溝を合わせ、車内からシャフトを差し込んで固定します。砲塔側には3つの溝があり、3方向のいずれかで砲塔を固定できました。このキットはそれを再現した初の模型です。もっとも完成すると見えませんが...

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#6730は、ドラゴンの最新金型技術と最新考証を惜しげも無くつぎ込んだキットで、ティーガーファンは絶対に見逃すことの出来ない製品となっています。

 

 

 

 

 

 

 

1コマ目
●転輪G1とG2、G5とG6、G7とG8、G9とG10はそれぞれ形状は同じで、タイヤメーカーのロゴの違いです。番号の若い方がコンチネンタル、もうひとつがフルダです。トリセツでは車体右に番号の若い方を使うように指示していますが、もちろん、そんなわけないです。ごちゃ混ぜにして履かせた方がリアルだと思われます。
●G11とG12の選択ですが、一番外側の転輪を取り付ける場合は、G11を使い、取り外した状態する場合はG12を使用します。
●G15/G16は、E3に取り付け、その後C1を被せる方が簡単です。

7コマ目
●ペリスコープに付くG26はS04号車にする場合は取り付けません。
●3つある拡大図の真ん中で、D1の何かを削るイラストがあります。分かりづらいのですが、これはD8を取り付けるガイドが2通りモールドされているが、後ろ寄りの方を削れ、という指示です。
●Y21は十字レンチで開け閉めするキャップです。十字の角度がそれぞれ違っているように取り付けるとリアルです。

9コマ目
●K31とK32の違いはどういう理由によるものか研究者により説が分かれています。時期によって違う、と言う方と下請けメーカーが2種類あったからだという方がいます。時期によって違う説によると、S04が3月生産車だった場合はK31だったようです。
●ファイフェルフィルターのパイプは、先にフィルター本体(M1/M2)(クミセツでは11コマ目)を取り付け乾燥させます。その後に、パイプ関連のパーツを少量の接着剤で仮止めして角度を調節しながら取り付けます。角度が決まったらしっかり接着します。
●牽引ワイヤーは取付金具C17との間にあまり遊びがありません。クミセツでは10コマ目に取り付けるC17も牽引ワイヤーと一緒に切り出して、仮組みをすることをお勧めします。また、19コマ目で取り付けるE11(予備アンテナケース)は右側の牽引ワイヤーとの位置取りが微妙ですので、このコマで両者を調整しつつ接着することをお勧めします。

10コマ目
●ボッシュライトを取り付ける場合は基部はK27を使用します。野戦規定ではボッシュライトの不要な昼間戦闘では取り外し、コネクター部に絶縁キャップを嵌めることになっていました。この状態を再現したのがK28です。しかし、実際には常にボッシュライトを付けたままにした車両が殆どのようです。S04は両方ともボッシュライトが付いていませんが、真面目に取り外しているのか、戦闘で破損したのか不明です。見本ではK28を使用しました。

14コマ目
●A13の後端はA9をワッシャのように使って留める構造になっています。従って、砲身を通す前にA4とA23を接着してはいけません。A9の図示が上下逆です。

18コマ目
●ベンチレーターカバーC6+C29は潜水時に防水カバーを取り付けた状態の再現です。通常はC5を使用します。
●ゲペックカステンを砲塔に取り付けるガイドがずれています。砲塔の中心線上に付くよう調整します。
●予備履帯ラックV5については訂正の紙が入っているはずですので、購入した後必ず確認してください。入っていない場合は、販売店に問い合わせてください。
●E13を取り付けるための砲塔側のガイドの位置がずれています。ガイドは削り取ってしまい、V5+D26もしくはD3と履帯で位置を決めてください。
●天板に履帯ラックを取り付けるガイドがやや薄く分かりづらくなっています。以下に#6700の原寸大スキャンを入れておきます。画像を保存し、等倍で印刷してガイド代わりにお使いください。

19コマ目
●K11とK8の取り付け位置が分かりづらいので図示します。